人手不足時代の新しいカスタマーサポートの形

はじめに

いまやカスタマーサービスにおいて、営業時間という概念は通用しなくなってきています。

特に24時間体制のカスタマーサービスは、クレジットカードやインフラ、ホテル業界では当たり前ですが、近年はネットショッピングや物流業界でも、深夜や休日に即時対応を求める顧客が増加しています。ライフスタイルの多様化により、夜間や休日のすき間時間に手続きを済ませたいというニーズが高まっているのです。帰宅後に再配達依頼や返品処理を行いたいと考えるユーザーも増えてきました。

一方で、人手不足やコストの制約から、十分なサポート体制を整えるのは難しく、「問い合わせがつながらない」「返信が遅い」といった不満がSNSを通じて広がるケースも増えてきています。

こうした背景から、現在AIチャットボットが脚光を浴びています。本記事では、活用事例やAIチャットボットの活用場面、導入時のポイントを、現場目線でわかりやすくご紹介します。

こうした現状を背景に、実際の現場ではどのような困りごとが起きているのでしょうか。
本題に入る前に、企業が直面している課題の一端を事例から見てみましょう。


■ A社(ECサイト)


大手ECサイトでは、ブラックフライデーセール明けの深夜、配送遅延に不満を持つユーザーからの問い合わせが急増した。しかしカスタマーサポート体制は平日の日中のみ、深夜の問い合わせは翌朝まで未対応のまま積み残された。
翌朝には『全然返事がない』という投稿がSNS上で拡散し、ブランドの信頼性が一時的に大きく揺らいだ。

■ B銀行

年度末・年度初めは口座開設・住所変更・税務関連の問い合わせが急増し、有人オペレーターが足りず、電話は常に待ち時間20分超。
急ぎのユーザーが不満を募らせ、口コミサイトやSNSで金融機関の対応品質への不満が広く拡散される。結果的に離脱率(解約や新規申込キャンセル)が上昇し、利用者数が激減した。

カスタマーサービスの現場で何が起こっているのか?

現在、人手不足と顧客の期待値の変化が重なり、カスタマーサービスが追いつかない状況が増えています。

以前は営業時間内に返事が来れば十分だった問い合わせも、今では「24時間即時対応」が当たり前とされるようになり、顧客の期待値水準が大きく上昇しています。

さらに、一般人のレビューやSNSの投稿がブランド評価に直結するようになってきました。
良いレビューは購買促進につながる一方、わずかな不満や少数の低評価レビューがインターネットを通して一気に拡散するリスクが高まっています。
「返信が遅い」「つながらない」という単純な不満が、低評価レビューとして残り、サービス全体の信頼感を損なうことも珍しくありません。

そんな中、多くの現場が少人数のスタッフで電話やメール対応に追われ、対応が間に合っていないのが実情です。人員を増やそうにも採用は難しく、コストの問題から十分な体制が組めないのが現状です。

その結果:

  • 問い合わせ未対応が発生
  • クレームが増加
  • レビューやSNSで不満が拡散 → ブランドイメージが低下

以上のような悪循環が、多くの企業で起こり始めています。

どうすればいい?対策方法とその限界

それでは、これらの問題はどのように解決できるのでしょうか?以下に一般的な解決方法とそのメリット・デメリットを挙げます。

対策方法メリットデメリット
オペレーターの増員– 自社スタッフによるきめ細やかな対応が可能
– 品質コントロールがしやすい
– 採用が困難
– 人件費・教育コストが高騰
– 夜間・休日対応はさらにコスト増
コールセンターへの外注– リソースを一時的・柔軟に確保できる
– 急な問い合わせ増加にも対応しやすい
– 品質管理が難しい
– ブランドイメージ毀損リスク
– ノウハウが社内に蓄積しにくい
24時間有人対応の自社構築– 自社基準のサービス品質を維持しやすい
– 顧客からの信頼感が高まりやすい
– コスト負担が非常に大きい
– 中小企業や人手不足の企業には現実的でない
AIチャットボットの導入– 24時間365日対応が可能
– コスト効率が高い(人件費不要)
– 定型業務の自動化に強み
– 複雑な対応は不得意(有人との併用が必要)
– 初期設計・改善運用の工数が必要

では、どうすればいいのか?

こうした背景から、現在、AIチャットボットという選択肢が注目されています。すべてをAIに任せるのではなく、「人とAIの役割分担」によって、コストを抑えつつ質の高い顧客対応を実現する活用法が広がっているのです。

AIチャットボットの得意・不得意

AIチャットボットは便利ですが、すべての問い合わせを自動化できる万能ツールというわけではありません。むしろ、人とAIがそれぞれの得意分野を補い合うハイブリッド運用こそが成功の鍵です。

■ 得意なこと

  • FAQや定型的な問い合わせへの即時対応
  • 24時間365日対応
  • 注文状況確認や配送状況案内などの基本的な手続き案内
  • 簡易な本人確認を含むフローの自動化
  • 夜間・休日の問い合わせの一次対応
  • データベースに基づくパーソナライズ

■苦手なこと

  • 複雑な問題解決や感情的なやり取りへの対応
  • 顧客ごとの状況や文脈を深く読み取ったパーソナライズ対応
  • クレームやトラブル時の適切な判断と交渉
  • 非定型的な問い合わせへの柔軟な回答

こうした特性を踏まえて、AIチャットボットは「得意な領域はAIに任せ、判断や対応が求められる部分は人が担う」といったハイブリッドな運用が効果的です。

実際の活用事例

本記事の序盤で挙げた2つの事例において、AIチャットボットを活用した例を挙げます。

A社(ECサイト)の事例

課題

  • ブラックフライデーセール明けの深夜、配送遅延に対する問い合わせが急増
  • サポート体制は平日の日中のみ → 深夜の問い合わせは翌朝まで未対応
  • 翌朝には「全然返事がない」という投稿がSNSで拡散 → ブランド信頼性が一時的に低下

導入後の変化

  • AIチャットボットを導入し、夜間でもFAQ・配送状況確認に自動対応
  • 問い合わせの約70%をチャットボットがカバー
  • SNS上でのネガティブ投稿が減少し、ブランドイメージが改善
  • オペレーターは重要度の高い問い合わせ対応に集中でき、対応品質も向上

■ B銀行の事例

課題

  • 年度末・年度初めに口座開設・住所変更・税務関連の問い合わせが急増
  • 有人オペレーター不足 → 電話は常に待ち時間20分超
  • 急ぎのユーザーの不満が口コミサイト・SNSで拡散 → 離脱率(解約・新規申込キャンセル)が上昇

導入後の変化

  • AIチャットボットが定型手続きやFAQへの一次対応を実施
  • オペレーターの電話対応負荷が大幅軽減 → 待ち時間短縮
  • SNS上での不満投稿が減少

導入時のポイント

AIチャットボットは非常に有効なツールですが、導入したからと言って、すべて自動でうまく回るわけではありません。準備や運用の設計をきちんと行うことで、効果を最大限に引き出すことができます。ここでは導入時に押さえておきたい4つの重要なポイントを紹介します。

■ データベースの整備

AIチャットボットは、学習させたデータベース(FAQや回答データ)をもとに回答する仕組みです。
したがって、そもそもデータベースが蓄積されていなければ、適切な答えを出せなかったり、誤った情報を出力してしまうリスクがあります。

ポイント

  • 導入前にFAQや業務マニュアルを整理・整備する
  • 問い合わせ履歴を分析し、「よく聞かれる質問」を把握して組み込む
  • 回答内容は最新情報に随時更新していく体制を整える

■ ユーザー体験を意識した設計

AIチャットボットは「使い勝手」も成功のカギを握ります。
使い勝手が悪いと感じたユーザーが途中で離脱したり、わかりにくくて不満を感じたりするケースが意外と多いのが現状です。

ポイント

  • 導線設計(どこからチャットボットに誘導するか)を丁寧に考える
  • 最初に「何に答えられるチャットボットなのか」をユーザーに明示する
  • 回答が難しい内容は無理に引き延ばさず、早めに有人対応につなぐ
  • 対話文面は丁寧なトーン/読みやすい表現を意識する(カスタマイズが重要)

■ 社内業務との連携設計

チャットボット単体で完結せず、有人対応が必要となる問い合わせが出てくることは多くあります。
そのときにスムーズに社内の有人対応へ引き継げる体制が整っていることが極めて重要です。

  • 社内の顧客管理システムとチャットボットを連携させる
  • カスタマーサービスが有人対応に切り替わる際に、過去の対話履歴が引き継がれるようにする
  • 社内側でチャットボット経由の問い合わせに対する対応フローを整備する
  • 「チャットボットで既にやりとりした内容は繰り返さない」など、オペレーター側の意識も統一する

■ 継続的な改善がカギ

AIチャットボットは作って終わりではなく育てていくものです。
最初に学習させたデータベースや設定だけで長期間放置すると、ユーザーの期待とのズレが大きくなり、逆に評価が下がるリスクがあります。

  • 定期的に問い合わせ履歴を分析し、未解決/不満が出ている質問パターンを発見
  • そこから新たな情報を追加・改善していくサイクルを作る
  • シナリオや回答文のブラッシュアップも定期的に実施
  • 社内の業務や商品・サービスが変わった場合は即座にチャットボットにも反映させる

まとめ

人手不足が続く今だからこそ、 人とAIがそれぞれ得意な役割を担い、協力して対応していくことで、限られたリソースでも質の高いカスタマーサービスは十分に実現できます。実際、AIチャットボットを導入して夜間対応のクレームが減った、オペレーターの負担が軽くなったといった声は多くの現場から届いています。
まずは自社のカスタマーサービスの現状を見直して、どの部分でチャットボットを活用できそうか、どこから改善していけそうかを考えてみることが、導入の第一歩です。

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